早朝6時...
ろくに眠れていない秋乃をよそに、高橋はスッキリとした顔で目覚めた。
高橋
『おはよう、秋乃ちゃん。』
秋乃
「おはようございます。」
高橋
『コーヒーでも飲む?』
秋乃
「私がいれますよ(*´ω`*)」
高橋
『ありがとー!って・・・ あれ?、秋乃ちゃん 今すっぴん?』
秋乃
「そうです(笑)シャワー浴びてそのままお化粧落としちゃいました(笑)あんまり・・・見ないでください(笑)」
高橋
『メイクしてるとちょっと大人っぽいけど、すっぴんだと一気に童顔になるんだね!めちゃめちゃ可愛い(〃ω〃)』
秋乃「やめてください...恥ずかしいから(笑) コーヒーあげませんよ!(笑)」
高橋
『ごめんごめん(笑)でも、かわいいよ(*´ω`*) 」
コーヒーを飲み終えると、互いに身支度を済ませ ホテルを出た。
高橋
『どうせなら、秋乃ちゃんはもうちょっとゆっくりしていけばいいのに。』
秋乃
「また寝ちゃうと、起きれそうもないので 家でゆっくりします。」
高橋
『はぁ~。一日中 秋乃ちゃんとイチャイチャしてたいよ(笑)』
秋乃
「私、家ではぐうたらしてるんで、幻滅しますよ(笑)」
他愛もない会話をしながら駅へと向かう。
秋乃を攻略できて満足げな高橋とは裏腹に、秋乃の想いは冷めたものになっていた。会話の端々に 温度差を感じながらも、愛想笑いをつくる自分がいる。
≪わたし… 何やってんだろう…≫
高橋
『じゃぁ、今回はありがとう。気をつけて帰ってね。』
秋乃
「はい。じゃぁ、また月曜日に。」
それから...一ヶ月あまり。
高橋から幾度となく食事に誘われたが、タイミングも合わず、なによりふたたび体を求められることに期待感も湧かないので、体裁よく断っていた。
やがて毎日来ていたメールも だんだんと減っていった。
そんなある日...
仕事が終わり更衣室に行くと、恵が電話していた。
『アハッ(笑) はーぃ!わかりました課長。 じゃぁ また後でね。』
<<課長・・・?>>
恵
『あ、先輩。 今の聞こえちゃいましたぁ?』
秋乃
「えっ? (;'∀')」
恵
『ほかの先輩たちには内緒にしておいてくださいね。実は私...課長と付き合ってるんですぅ(〃ω〃)』
ヒソヒソと内緒話をするように恵はそう打ち明けた。
秋乃
「そうなの?・・・・いつから?」
恵
『2週間くらい前からです。お食事に誘ってもらって、それから(*´Д`*)』
秋乃
「へぇ・・・そ・・そうなんだ・・・」
恵
『なんかぁ、課長奥さんとうまく行ってないって言ってて・・・あと、恵のことずっと気になってくれてたみたいで。恵も課長カッコイイと思ってたし、丁度いいかなぁって。』
<<うわぁ・・・ 誰にも同じようなこと言うんだ・・・あの人 >>
秋乃
「そっか。でも あんまり のめり込んじゃダメだよ。」
恵
『大丈夫ですよ(*´ω`*) これからデートなんです♡』
秋乃
「そうなんだ(笑) じゃぁ 楽しんでね! お疲れ様。」
浮かれて化粧直しをしている恵を置いて更衣室を出た。
<<なんか・・・ガッカリ>>
一夜を共にした結果、高橋との体の相性は...お世辞にも良いとは言えないものであったが、少なくても 高橋からは、いまだに関係を求められる存在であると思っていた。
だが、どうやら… 恵と課長の一件を知れば、そうではなかったらしい。
秋乃は、思ってもいなかった課長の軽薄な行動に、なかば諦めの気持ちでいっぱいになっていた。
<<えっちできたら・・・誰でも良かったんだろうな。>>
高橋が秋乃にかけてくれた言葉が、全て薄っぺらく感じた。
<<なんか・・・疲れた。・・・もう、いいや。>>
秋乃には、過去の恋愛で つらい経験があり、それ以降...『男』に期待することを止めていた。なのに...ずっと好感を持っていた上司の高橋に、なんども甘い言葉を囁かれ、久しく忘れていた恋愛感情を意識するまでになっていたのである。
<< やっぱり高橋課長のこと、好きだったのかな・・・>>
過度な期待をしていた訳じゃない...
けれど...あれだけ、秋乃とこうなりたかった、と言っておいて、一度や二度のタイミングの悪さで断ると、簡単に次に乗り換えてしまう。
この節操のなさ...そんな男だと見抜けなかった自分にも情けない想いでいっぱいになってしまう。
<<タイプの男に、好きと言われ...体を求められ...それを、私自身を必要だと思ってくれている、と勘違いしたのは、ほかでもない自分自身。ほんと わたしって...カッコ悪い。>>
いつも、秋乃の恋愛は、似たような結末になってしまう。
信じられるかも・・・と思った相手に期待を裏切られる。そんな相手と見抜けずに関係を持ってしまう自分に嫌気がさし、ますます恋愛に対して失望し、心を閉ざしてしまうのだった。