「はぁ・・・・・わかんない。」
霧島愛華は、大学受験のために深夜まで勉強していた。
愛華:
「げ・・・もう2時じゃん。あーぁ、もうヤダーーー!!」
ペンを放り出し、ベットに倒れこむ。
愛華:
「このままじゃ、ストレスで死んじゃうよぉ愛華。はぁ・・・
あ、ドーナッツあった気がする、そう言えば。」
そう言うと、自室から出て階下のリビングに向かう。
両親はもう寝ており、家の中はもう真っ暗。
キッチンに行き、ドーナッツとミルクを取り出す。
愛華:
「あぁん・・何か、一人で食べんの淋しいなぁ。
お兄ちゃんまだ起きてるかな・・・」
愛華の兄、霧島隼人は25歳で、母屋の隣にある離れが隼人の部屋になっている。
リビングからのぞくと、まだ電気が付いていた。
愛華:
「ラッキー!!お兄ちゃん起きてるぅ!ドーナッツもってってあげよぉ。」
お盆にココアとミルクとドーナッツを乗せ離れに向かう。
愛華がいる母屋と離れとは渡り廊下でつながっている。
離れと言っても、元は祖父母が住んでいた平屋で
キッチンもお風呂もあり、生活できるようになっている。
その隣に両親が家を建て、渡り廊下をつけ、離れ「風」にし、
祖父母が亡くなってから、そこを隼人が使っているのだ。
使っていると言っても食事は母屋でとることがほとんど。
お風呂も友達が泊まりに来た時くらいしか使ってはいない。
渡り廊下は母屋の勝手口から離れの勝手口に繋がっていて通常施錠もされていない。
愛華は勝手に離れに入り、部屋に向かう。
襖の隙間から部屋の光が漏れ、隼人がいる気配がする。
愛華:
「ねーお兄ちゃん起きてる?一緒にドーナッツ食べない?」
そう言って戸をあけると、隼人はヘッドホンをしてTVを見ていた。
映し出されている画面の中では制服を着た女の子が裸の男の人に身体を触られていた。
そう、隼人はアダルトDVDを見ていたのだ。
戸が開いた気配に気づいた隼人は振り向き、目を見開いて固まっている愛華に気づき慌てふためく。
隼人:
「うわ・・・!!お前なんだよ!!」
愛華:
「あ・・・あぁ!!!ごめん!!!」
驚きすぎて固まっていた愛華は、謝ると戸を閉めキッチンに走って戻る。
愛華:
「わ・・・どうしよう・・・」
愛華は隼人も男だから、そういうものを見るということは認識していたが
いざ目の当たりにしてしまうと、目の前に広がった光景が信じられなかった。
隼人:
「愛華・・・」
隼人がキッチンにはいってきた。
愛華:
「お兄ちゃん・・・ごめん」
隼人
「いいけど。何しに来たの?」
愛華:
「ドーナッツ・・・一緒に食べようと思って・・・」
隼人:
「あぁ。そう言えば腹減ったな。喰う。愛華もここで喰う?」
愛華:
「うん。」
そう言うと、隼人はお盆を愛華から受け取り、部屋に向かう。
戸をあけ、テーブルにお盆を置くと隼人はソファーに座った。
愛華はちらっとTVを見ると、衛星放送の音楽番組に変えられていて、ほっとした。
愛華は隼人の隣に座ると、ドーナッツをほおばり、何事もなかったかのように、
今日学校であった事などを話し始めた。
しかし、愛華の中で「お兄ちゃんも男」という現実がさっきの一件で明確に意識され、
今まで隼人に感じていたのとは違う感情が芽生える。
『なんだろう・・・この気持ち。』
愛華は自分でもよく分からない感情に戸惑っていた。